横須賀の三笠桟橋から船に乗り、約10分。たどり着くのは東京湾でただ一つの自然島——無人島である。だがその真の正体は「無人島」ではなく「時に封じ込められた要塞」だ。江戸時代末期から昭和20年の終戦まで、ここは首都・東京を守る軍事要塞であり続けた。旧陸海軍の砲台跡、苔むした石垣、赤煉瓦で組まれたトンネルが今も残り、国史跡に指定され、日本遺産にも登録されている。密林、廃墟、潮風——しばしば「東京湾の天空の城」と称される。
その希少性は「無人島 × 島全体を貸切れる」という組み合わせにある。平日には島をまるごと借り切れる。日中はガイドが要塞の遺構と手つかずの自然を案内し、この島が一世紀半にわたっていかに東京湾を守ってきたかを語る。夜の帳が下りれば、無人島はあなたのチームだけのものとなる。屋外約50名/屋内約20名の貸切レセプションに、太鼓の演奏を加え、専用クルーズで往復することもできる。対岸に街の灯がともり、足下には無人の百年要塞——この「歴史に囲まれ、世界から隔絶される」スケール感は、いかなるホテルの宴会場にも出せない。
企画を組む者にとって、これは「唯一無二の一夜」を求める小団体のための一枚である。大規模には向かない。だからこそ貴重なのだ。人数が少ないほど「歴史の孤島がまるごと我々一団のために開かれる」独占感が強まる。東京のあらゆる豪華会場を見尽くした客に、猿島が差し出すのは、彼らが未だ体験したことのない物語だ——もてなされるのではなく、一つの島を託される。