芦ノ湖は箱根の心臓というべき水面——富士山と箱根神社の赤い鳥居を映す、火山の堰止湖である。多くのチームは遊覧船で両岸を渡り、写真を撮って去るだけだ。だがこの企画がなすのは、「移動」そのものを一席の茶へと変えることである。
運営する富士急は2025年冬、芦ノ湖のために「茶」を主題とした観光船「箱根遊船 大茶会(Daichakai)」を仕立てた——湖上に茶文化を載せた、湖でただ一つの船だ。船内は普通の観光デッキではなく、一連の茶意の空間として設計されている。畳を敷き、金色の茶室を意匠とした「茶室 金風庵」、丸窓越しに芦ノ湖と富士を額に収める「茶室 緑風庵」、茶畑の段々を連想させる開放的な屋外ベンチ「茶畑だんだん」、そして提灯の柔らかな光で幻想的な雰囲気を醸す灯籠区。周遊航路は箱根関所跡港—元箱根港—箱根園港—湖尻港を結び、約70分で一周する。同時に、船全体を貸切れる大型MICEの水上会場でもある——JCB/JNTO公式に正式収録され、貸切は最大約595名に対応する。
企画を組む者にとって、これは「規模」と「詩情」を同時に差し出す稀な一枚である。一般の水上ディナー船が語るのは収容と飲食だが、ここで語られるのは——富士を前に、湖の光が移ろうなかで、数百のゲストに同時に一席の移ろう茶を供することだ。団体のもてなしが求めるのは、まさにこの「全員が同じ非日常の一瞬を分かち合う」一体感であり、その一体感を、この船は芦ノ湖の水面に浮かべる。