杵築は日本で唯一の「サンドイッチ型」城下町である。二つの丘の上には武家屋敷、谷底には商家町。かつて武士は高みに、町人は谷に住み、坂道が両者をつないだ——この立体的な江戸の町割りは、日本のどこにも二つとない。石畳の坂「酢屋の坂」「志保屋の坂」が向かい合い、そのあいだを歩けば、まるで生きた江戸の風景のなかに入り込んだようだ。
ここの着物散策は、写真の小道具というほど単純なものではない。和楽庵で約三百五十着のなかから選び、和服に着替えて坂を上る。着物を持てば、城内の複数の公共施設が無料で開放され、「タイムスリップの感覚」が散策のあいだじゅう貫かれる。北台武家屋敷の能見邸、大の茶屋では、抹茶の手ほどき(自ら茶を点てる指導)を受けられ、本物の武家屋敷に腰を下ろして、江戸の武士の日常の暮らしと客のもてなし方を感じられる。
提案に携わる者にとって、これは「控えめでありながら質感に富む」没入の一枚だ。杵築は騒がず、混み合わず、それでいて「日本で唯一の立体的な城下町」というその独特の身分ゆえに稀少である。客に和服を着せ、坂を歩かせ、武家屋敷で一碗の茶を点てさせる——観光を、静かな江戸の漫遊へと変える。衣を選び、着付けをし、「酢屋の坂」を上るまで、一歩ごとがそれ自体で一幅の絵となる。文化志向のMICE団体にとって、この人波のない、町だけの静謐な没入こそ、京都の名所が与えられないゆとりであり、写真も記憶も、より長く味わいに堪えるものにする。