金沢21世紀美術館は、行列をつくって仰ぎ見る殿堂ではない。妹島和世と西沢立衛(SANAA)が設計した、「正面もなければ背面もない」円形のガラスの美術館である——四方すべてが入口で、市民はどの方向からでも入ってこられる。建築そのものが、「美術館とは何か」への穏やかな問い直しなのだ。国内で来館者数が最上位クラスの現代美術館でありながら、公園のような開放感と軽やかさを保ち続けている。
それを真に代替不能にしているのは、誰もが待ち望むあの作品——レアンドロ・エルリッヒの《スイミング・プール》だ。プールの縁に立つこともできれば、「プールの底」に歩み入ることもできる。薄い一層の水が二つの世界を隔て、人々は水面越しに見つめ合い、手を振る。この瞬間は、現代日本が世界に与えた印象をほとんど定義している。そしてハイエンドのキュレーションに携わる者にとって肝心なのは次の一言だ——館内のレストランFusion21は、日本政府観光局(JNTO)により正式に「ユニークベニュー」として登録されている。つまり、閉館後の夜に、ガラスの空間全体を自らの会場に変え、レアンドロの《スイミング・プール》を背景に立食のレセプションを催せるのだ。「芸術のなかで杯を上げる」——他所では単なる惹句にすぎないこの一言が、金沢では本当に実現できる場面となる。