この建物そのものが、秋田の花街文化の生きた化石です。その前身は、1916年創業の老舗割烹「松下」——所在する川端一帯は、かつて約二百名の芸妓が行き交って芸を献じた賑わいの花街であり、「秋田美人」という言葉も、ここに源を発すると伝えられます。2016年、この料亭は「あきた文化産業施設『松下』」として丁寧に再生され、百年の花街の記憶が、ふたたび足を踏み入れられる現場を得ました。賓客が踏み入れるのは、テーマレストランではなく、秋田というこの街の最も風雅なひとときが、まるごと保存された空間なのです。
会場の核心は、80畳の大広間です。着席で約50名、立食で約70〜80名を収容する、老舗の料亭ならではの、厚みと情感をたたえた宴席の空間です。そしてこの一夜を真に生き生きとさせるのが、現代に復興した「秋田舞妓・芸者」です。彼女たちの舞がこの大広間に軽やかに登場し、「秋田美人」を一つの言葉から、目の前の人と芸へと呼び戻し、宴席に華やぎと情趣を添えます。これは「土地・建築・芸能」の三者を縫い合わせた没入です——場所には歴史があり、その身姿には継承があり、すべてが、本来あるべき場所で起こるのです。
提案する側にとって、これはきわめて地域独占性の高い一枚です。京都でも金沢でもなく、秋田だけに属する花街の物語です。応えるのは「地域の真実性」を重んじる団体とインセンティブ旅行——顧客が求めるものが「また一つの芸妓晩餐会」ではなく、「出自があり、建築があり、源流のある秋田だけの一夜」であるとき、松下はほぼ代替がききません。