仙巌園は、薩摩藩主・島津家の別邸。第十九代当主・島津光久が万治元年(一六五八年)に営み、今に至るまで三百六十余年を数えます。最も瞠目すべきは、天地をまるごと庭に取り込むその気宇——庭は雄大な桜島を「築山」とし、眼前の錦江湾を「池」とします。日本の借景庭園のなかでも最大級の一手であり、目にするのは精緻な一方の池石ではなく、活火山ひとつと湾ひとつを、我が庭の一部とした眺めです。この尺度は、九州南端を数百年統べてきた大名家にしてはじめて許されるものです。
さらに得がたいのは、二〇一五年、仙巌園一帯を核とする近代化産業遺産群(隣接する世界遺産級の施設・尚古集成館を含む)が世界文化遺産に登録されたこと——ここはまさに、幕末の薩摩が日本の工業近代化を推し進めた現場です。こうして一つの庭園が二つの脈絡を同時に担います。一つは島津家八百年の武家の格式と美学、もう一つは日本が近代へ歩み出した起点。ゲストが足を踏み入れるのは、歴史と自然が共に戴冠した土地です。
ハイエンドな提案において、仙巌園は「格式」という二文字に最も確かな重みを与えます。御殿での特別晩餐、桜島を背にした薪能(屋外の能)、甲冑や和服の文化体験——いずれも島津家の実在の歴史に根ざし、書割ではありません。活火山と湾を幕とし、大名の別邸を席とする——これは、最も目の肥えたVIPにさえ「丁重にもてなされた」と感じさせる一枚です。