これは「時間」を作品へ書き込む書だ。静岡の紅葉山庭園で、ゲストは墨ではなく、溶いた抹茶の液で書をしたためる——「抹茶書道®」。筆を下ろすときは鮮やかな翠緑、だが筆跡が乾き空気に触れると、緑は時とともにゆっくりと茶褐へと転じていく。つまり、書いた文字が目の前で「変わり」続け、過程と時間、そして「無常」そのものが、そっと作品のなかに収められる。この観念は、日本美学の最も核心にある一筋——物哀と無常、すなわち美は不変ではなく変化そのものに宿るという思想に、まさに呼応する。
体験の設計も成熟している。英語で指導できる書家・翔蘭(Shoran)が率い、初心者でも取り組め、最大約20名。場を紅葉山庭園——四季の移ろいそのものである日本庭園——に選ぶことで、「室内で書きとめる無常」と「屋外の庭の四季」が内と外で呼応する。ゲストが持ち帰るのは、自ら書いた一枚の文字だけではない。時とともに色を変え続け、「その日」を封じ込めた唯一の作品である。
提案の場では、「独創×哲学を語れる×手を動かす」という稀な一枚だ。どこにでもある書道体験ではなく、登録商標(®)の独創プログラムで、人を惹きつける物語を自らに備えている——抹茶で字を書き、緑が褐に変わるのを見て、無常を味わう。手を動かしつつ思想の深みも欲しく、しかも英語に不自由のない団体にとって、この新しさと含意は、ありふれた「毛筆の練習」より遥かに行程に据える価値がある。