京都・東山の清水あたりは、かつて窯の煙が日を覆っていました——ここは「清水焼」の原郷であり、数百の登り窯が坂地に沿って段々と連なり、薪の火と斜面の自然の引きで一つひとつの茶陶を焼き上げていました。けれども電気窯とガス窯が薪火に取って代わると、これらの巨大な煉瓦造りの窯は一座また一座と取り壊され、埋められていきました。藤平陶芸の価値は、まさにここにあります——「登録文化財」として残された一座の登り窯を守っているのです。清水焼の産地全体を見渡しても、こうして今なお存続する登り窯は、すでに稀なものです。
つまり藤平に足を踏み入れて客が目にするのは、轆轤の前で坏を挽く陶工の姿だけではありません——そうした体験なら京都のいたるところにあります。彼が立っているのは、消えゆく窯業史の実体の現場です。百年を超える煉瓦造りの窯室が坂に幾重にも積み上がり、一つひとつの窯室の位置、一筋一筋の火道の走りは、「火が斜面をどう流れるか」への先人の理解が建築へと凝ったものなのです。ここは「手作り体験」ではなく「建築遺産」の視点からこそ、真に読み解ける場所です。
高格のお客さまへの提案の落としどころは、それゆえ極めて明快です。ここはもう一つの陶芸工房ではなく、「清水焼が清水焼たりうる所以」の答えそのものなのです。ここで轆轤の上に手ずから一つの器を残すことと、文化財の登り窯の前に立ってそれがなぜ稀少なのかを聴き取ること——この二つが重なってはじめて、他所では複製できない京都の記憶が成るのです。