截金(きりかね)——金箔を髪の毛よりも細い線状に截ち、一本ずつ貼り重ねて文様を描く——は、失われかけた聖なる技法です。かつては仏像や経箱を荘厳するために用いられ、仏教美術のなかでも「光そのもので文字を綴る」に最も近い手仕事でした。今日、その技を守り継ぐ者は数えるほどしか残っていません。江里朋子は、まさにこの血脈を現代へ継ぐ人。母・江里佐代子は人間国宝に認定された截金の名手であり、朋子の作品は平等院や京都迎賓館といった場に据えられています——画廊の展示品としてではなく、国家的な空間に選ばれた現代の聖なる芸術として。
お客様を彼女の私的な工房へお連れするとき、そこにあるのは「一人の職人を見学する」体験ではありません。消えゆく技が、目の前で確かに生きているという光景です。竹刀のもとで金箔が髪ほどの細線に截たれ、息を止めた静寂のなかで、一条の光が文様へと組み直されていく。真の蒐集家にとって、ここにはもう一層、ほかでは得られない道が開かれています——訪問だけでなく、作品を求めることも叶うのです。オークションで後から追いかけるのではなく、源泉においてこの聖なる芸術を理解し、手にすることができます。
これは旅程のなかの一つの「名所」ではなく、格を伴う出会いです。人間国宝の血脈と、国家の迎賓の場に選ばれた技と、世界から静かに稀薄になりつつある美学と、真正面から向き合う——京都の旅のなかで最も貴い位置に据えるにふさわしい一幕。旅全体を記憶に刻む、その頂点として。