アマネムは、世界のラグジュアリーの基準を書き換えてきたアマンが、日本で初めて温泉を主役に据えたリゾートです。名は「アマン(平安)」と「ネム(合歓の木)」の合成——ブランドの静けさと、この地に根を張る樹の名を一つにした。舞台は伊勢神宮の神域から連なる伊勢志摩国立公園の森、リアス式の英虞湾を見下ろす丘。ここは「行く場所」ではなく「委ねる場所」だと、到着した瞬間に体で分かる。
建築を手がけたのは、アマンを世界のアマンたらしめた故ケリー・ヒル。日本の民家の水平線と、アマン特有の削ぎ落とした現代性を溶かし合わせ、24のスイートと4つ(構成により最大8つ)のヴィラを丘に散らした。各スイートは約99㎡、すべてに専用の温泉が備わり、ヴィラは2ベッドルームで約375㎡。客室から一歩も出ずに、湯に浸かりながら英虞湾に沈む光を独占できる——この「他者のいない贅沢」こそ、最高級のプライバシーを求める客が本当に払う対価だ。
中核は2,000㎡のスパ。日本の6世紀に遡る湯治の伝統を下敷きに、石で縁取られた浅い露天、大浴場、そして室内外の温泉を備えた二棟のプライベート・スパ・パビリオンからなる。トリートメントは漢方の思想に立ち、海藻や真珠粉、季節の薬草を調合する——伊勢志摩の海と森が、そのまま身体に還ってくる仕掛けだ。
提案の観点では、アマネムは行程の「締め」に置く一枚。神宮で精神を、志摩の海で味覚を満たした旅の最後、森と沈黙に身を沈めて全てを鎮める。派手さではなく、深い静けさで記憶に残す——それがこの宿の役割です。

