展覧会を観るということが、ここではまず靴を脱ぐことから始まります。
靴下も脱ぎ、裾を膝の上までまくり上げます——この先の道は、裸足で歩くことになります。床ははじめ乾いていますが、歩いていくうちに水のなかへ踏み込み、水は膝まで上がってきます。作品は壁に掛かってあなたを待ってはいません。あなたが動けば作品も変わり、立ち止まればまた変わり、前へ進めば作品もついてきます。さらに奥へ進むと温室があり、見上げれば一万三千株を超える生きた蘭が、すべて頭上に垂れ下がっています。人が近づくと蘭は上へ昇り、道を一本空けてくれます。
つまり靴を脱ぐというその動作で脱ぎ捨てているのは、「観客」という立場そのものです——作品の外に立って眺めるのではなく、あなたはその内側で動いている一部になります。
場所は豊洲です——お台場ではありません。お台場にあった teamLab Borderless はとうに麻布台へ移っており、あちらは別の館ですので、混同しないでください。豊洲へは、ゆりかもめの「新豊洲」駅で降りればすぐ。豊洲市場から歩いて来ることもできます。同じ路線がお台場へ通じているので、昼はここで裸足のまま水に入り、夕方には湾を眺めに行く——一日のなかに収まります。会期は二〇二七年末まで延長されると発表されています。
そして、混みます——東京でもっとも混む場所のひとつで、チケットは前もって手配しておいてください。開館時間は季節によって変わりますので、出発前にその日のスケジュールを確かめておきましょう。二〇二五年一月の拡張以降、敷地はかなり広がり、「運動の森」の一帯が加わりました。以前の印象のままで時間を見積もると、足りなくなりがちです。
外へ出るとき、足は濡れていて、裾はまくり上げたまま、靴をもう一度履き直すことになります。記憶に残るのは自分が何を見たかではなく、その一本の道を、自分がどう一歩ずつ歩いたか、ということです。