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柊家旅館 Hiiragiya
滞在 · 伝世旅館 · 京都

柊家旅館 Hiiragiya

出典 www.hiiragiya.co.jp
なぜ記憶に残るのか

京都・麩屋町——一本の細い路地をはさんで、二軒の老舗旅館が向かい合って立つ。一方は宝永年間(1704〜11年)から三百二十年余りを重ねる、現存する京都最古の旅館・俵屋。そしてもう一方が、1818年(文政元年)創業の柊家(ひいらぎや)です。二百年ものあいだ、両家は路地をはさんで対い合い、日本の「おもてなし」の最高水準を互いに磨き合ってきました。柊家に泊まるとは、一室を選ぶことではなく、文人と皇室がともに愛でてきた時間そのものを選ぶこと——玄関をくぐる客を「来者如帰、帰者如来(来る人はわが家に帰るごとく、帰る人はまた訪れるごとく)」の心で迎える、その姿勢は今も変わりません。

柊家の真の稀少さは、豪奢にではなく、いまや失われかけた「数寄屋」の建築の技にあります。一本の柱、一本の梁、一枚の障子、一つの床の間——そのすべてが、茶の湯の美学が説く抑制と余白のもとに、手仕事で組み上げられている。木、紙、土、そして光が、寸分の狂いもなく配されている。これは復元された懐古の書割ではなく、今なお日々に使われ、職人の手で保たれ続ける、生きた文化の器です。宿泊客は歴史を見学するのではなく、しばし歴史の内側に住まう——それこそ、新築のラグジュアリーホテルがいかに資本を投じても再現できないものです。

文化の深みを求めるお客様や家族の旅にとって、柊家は京都の旅路に静かで重厚な「錨」となり得ます。昼は街で匠、茶事、庭を体験し、夜、この二百年の数寄屋に帰って、一日の見聞をゆっくりと沈めていく。声高でも、演出でもない。それでいて人に、京都の「上質」とは、時間と抑制が育てた気品にほかならないと、真に理解させてくれる宿です。